『細い道だけど、離合できっかな』
このように使われる「離合」という言葉をご存知でしょうか?
熊本県内の自動車教習所でも使用される「離合」
この方言は、熊本を中心に九州各地をはじめ、山口県や広島県、四国の一部でも広く使用されています。
漢字が当てられている方言も珍しいですが、そもそもの本来の離合の意味は、国語辞典によれば「(政党などが)離れることと合わさること。離れたり一緒になること」と掲載されています。
熊本県民の中にはこの「離合」という言葉が方言と知り、衝撃を受けることも度々あります。
今回は熊本でも非常に身近な方言「離合」について解説します。
「離合(りごう)」とは?
「離合(りごう)」とは、「(狭い道で車が)すれ違う、通り過ぎる」という意味です。
「すれ違う」といっても広い道での車同士のすれ違いについては使用されず、車が2台ギリギリすれ違うことができるかどうかの細い道での際に、この言葉が使われています。
【林道谷口線】
山手~郷ノ原を結ぶ舗装林道から分岐し、更に北側の山林を“ひ”の字型に通る林道。
幅員は普通車一台程で、所々に広めのスペースがあるため離合が可能。
沿線には何もなく、行き止まりとなる。制限速度は20km/h。 pic.twitter.com/Uqp6Vi96vz— 篠栗bot (@sasaguribot) April 20, 2020
また全国の鉄道ファンの間では、この「離合」が転じて、電車と電車のギリギリ行き違う場面を「離合」と表現することが一般的となっています。
大量に右折してくるバスの隙間から1枚!
この離合は今でも狙えるものの、615号の前照灯はLED化されてしまった。 pic.twitter.com/KAMU2HGd5C— カフェオレ (@seki_C35) April 26, 2020
ある民間の調査(Jタウンネット)によれば、日本人の36%が「離合」を上記の「(狭い道で車が)すれ違う、通り過ぎる」という意味で使っていることがデータとしても出ています。
方言でありながらも、これだけ身近な「離合」、辞書によっては方言としての「離合」が掲載されていることもあり、方言という枠を超えて、標準語としての地位を獲得する日も近いかもしれませんね。
次は「離合」の使い方をみていきます。
「離合」の使い方
「離合」は以下のように使われます。
「離合」の使い方①(標識など)
「離合注意!」
標準語:この道を通る際は、対向車に注意してください
工事中の細い道の前には「離合注意」と書かれた標識が設置されることも、熊本県では一般的です。方言だと認識がほとんどないためか、道路標識といった公共の場面であっても当たり前のように使用されることが多いようです。
「離合」の使い方②(標識など)
「離合場所」
標準語:この先、道が狭いので対向車が来た場合は、ぶつからないよう、この場所ですれ違うようにしてください。
同じく、車道の標識として使用されています。
「離合」の使い方③
「あの道は狭いけん、離合できんもんね~」
標準語:あの道は狭いので、車と車が通りすぎることはできないよね~
会話のなかでの一般的な使用例です。
「離合」のまとめ
ここまで「離合」について紹介してきましたが、いかがだったでしょうか?
最後に「離合」についてまとめておきます。
・「離合」とは狭い道で車がすれ違う、通り過ぎるという意味。
・熊本県のみならず、九州各地や山口県、広島県、四国の一部で広く使用される。
・熊本県民の多くが「離合」を標準語だと信じてやまない。
以上、「離合」の解説でした。